「!!」 ガキッ 「ぐ!」 花言葉〜浮気〜 「どうしたんだ、大佐の、あのアザ。」 「大佐、また朝帰りだってよ、 で、タイミング悪くて、エドに見つかっちまったらしくて」 「ええ?!何度目ですか?!」 「数えたくもねえな」 「まったくですな!」 「で、大将が、ガツン、と?」 「・・・いや。麗しの中尉殿が。」 「・・・ぶっ放した?」 「さすがにサイレンサーをつけていなかったらしくて、 台尻でガツン!と」 「・・・・処置なしだな」 「全く」 バサリ。 露を含んだ、青や紫の紫陽花の花束が、男の目の前に投げ置かれた。 ちら、と目をあげると、 そこには、何よりも誰よりも愛おしい錬金術師が。 「鋼の」 「消炎作用があるっていうから。目にでも、あててれば」 ふてくされて、こちらを見ようとはしない。 「・・・紫陽花の花言葉を知っているかい、鋼の」 「知るかよ、そんなのっ」 男はふっと笑い、紫陽花の花言葉を連ねて見せた。 「”移り気” ”高慢” ”辛抱強い愛情””元気な女性” ・・・ああ、これは君のことだね。 ”あなたは美しいが冷淡だ” ”無情” ”浮気” ”自慢家” ”変節” ”あなたは冷たい” ・・・・うれしいよ、嫉妬してくれるなんて」 「ばっ・・!何勝手にこじつけとるかっ!!」 その、あまりの言葉に、錬金術師は怒りで真っ赤になって。 (半分ほどは、照れていたのかもしれないが) 「だってそうだろう? ”浮気者!” ”こんなに貴方を見ているのに!”という言葉ばかりだ、これらは」 鮮やかに、愛おしげに、己を見て、微笑む、恋人。 「・・・」 鋼の錬金術師の顔が、くしゃり、と歪んだ。 「・・・馬鹿野郎ぉ・・・」 男が、 錬金術師をその外套ごと、くるみこんで、 その薔薇色の耳朶に嬉しそうに囁いた。 「ああ、本当に馬鹿野郎だよ、私は」 こんな幼い子に骨抜きされて。 ベッドでの諜報活動だなんて、日常茶飯事だったのに、出来なくなった。 ・・・恋人を嘆かせたくなかったし、 なにより、恋人の体以外を抱きたくない自分に驚きもした。 いかにテーブルで、 あるいは暗闇で恋を囁くだけで、 情報を仕入れねばならなくなったというのに。 ・・・その面倒くささすら、楽しくて。 昨日だとて、 ある高官の愛人である高級娼婦を口説き落とすのに、 一晩かけてしまった。 ・・・ベッドで愛を囁いて。 その躯に訊けば、もっと楽であったのに。 酒好きな彼女の口がほぐれるまで、一緒に酒を酌み交わして。 たまたま通りかかった己の副官に、顔面に台尻を叩きつけられはしたが。 (あれは、恋人の錬金術師に、そんな場面を見せるな、 という彼女からの忠告であったので、 心して、彼女の鉄槌を受けたのだ。 ・・・錬金術師が己が治めるこの地へそろそろ訪れるであろうことは、 わかっていたのだから。) 嫉妬して、でも、結局は己の顔を見に来る錬金術師が愛おしくて。 この、末期症状には、君の口付けと、抱擁しか、効かない。 |